BCA/MBLA講演ツアー紀行文
“MBLA 2015”受賞者
MBLA2015講演ツアーを終えて 北海道大学大学院理学研究院化学部門 准教授
前田 理 |
「本当に私でよいでしょうか?」というのがこの賞をいただいたときの率直な感想でした。2004年にMBLAが始まって以来、計算機のみを相手にする化学者として初めて、このツアーに参加させていただきました。私でよかったかどうかはさておき、個人的には、このツアーでしか味わえない数々の得難い経験に、大変なありがたみを感じています。
どこに行っても質問されたのが、「反応をこの方法でどこまで予測できますか?」というものでした。「単純な系ではもちろんYESですが、系が複雑になってくると計算時間や計算精度の面で難しい場合があります」というのが私の答えなのですが、(少なくとも表面的には)おおいに期待を示してくれる人が多い中、実際に自分達の反応に適用し試してみたいという人、系に依存するという私の回答に煮え切らない様子の人、などなど、反応は様々でした。あるホストの先生(もちろん有機合成の先生)は、自分のグループでプログラムを使いたいから、最新版がリリースになったら連絡してください、とおっしゃっていました。理論家の話に聴衆が退屈しないかと不安でしたが、トップ大学・研究所の方々を相手にこの心配は不要であったと思いました。
講演以外の時間は、ホストの先生方や学科のスタッフ・学生の面々とのディスカッションでした。最先端の有機合成に、分析、計算、インフォマティクスなどを織り交ぜた刺激的な討論を、連日たくさんの方々とさせていただきました。私の訪問を受け入れてくださったホストの先生方や討論していただいた方々に、この場を借りて厚く御礼申し上げます。
最後になりますが、理論家である私に本賞を出すことをご決断いただいた山本尚先生をはじめとする審査員の先生方、ならびに、MSD生命科学財団の皆様に深く感謝を申し上げます。また、研究をご指導していただいた諸熊奎治先生、大野公一先生、武次徹也先生、これまで支えて下さった共同研究者や学生の方々に、心から感謝申し上げます。