オーガナイザーから

第36回 万有札幌シンポジウム
未来を先導するための有機化学の新たな挑戦

第36回 万有札幌シンポジウムOrganizer
北海道大学大学院薬学研究院 佐藤 美洋

 1989年に初めて開催された万有札幌シンポジウムも,今年で36回目を迎えました。この間,北海道内の化学に関わる研究者や学生が一堂に集う一大イベントとしてすっかり定着しました。2020年初頭からのCOVID-19のパンデミックの影響で,オンラインでの開催を余儀なくされた時期もありましたが,昨年の第35回万有札幌シンポジウムからは,オーガナイザーの伊藤先生のご尽力で本来の対面開催が復活し,今年も同様に対面で実施できることを大変嬉しく思っています。
 さて,今回のシンポジウムでは「未来を先導するための有機化学の新たな挑戦」というタイトルを掲げました。我々はCOVID-19によるパンデミックを乗り越えることができましたが,世界は今,様々な危機に直面していると思います。例えば,COVID-19とは異なる新興感染症の発生や,既存の薬剤に関する多剤耐性菌の広がりも危惧されますし,CO2の増加による地球温暖化の影響,人口増加や大量消費の影響による資源の枯渇や廃棄物等による環境破壊など,人類の生存を脅かしかねない問題がたくさんあります。これらの喫緊の課題を解決できる学問領域の一つが「化学」であり,とりわけ様々な物質を創出したり変換したりできる「有機化学」の果たす役割は大きいと考えています。その観点から,今回の第36回万有札幌シンポジウムでは,未来を先導し変革し得る「新しい有機化学」を切り開いておられる著名な先生方にご講演をお願いしました。このような最先端の研究の場におられる先生方の講演を間近で拝聴し,さらには研究者間の交流を深める場として,本シンポジウムは非常に貴重な機会となると思います。参加者の皆様におかれましては,本シンポジウムで存分に議論し,有機化学が先導する明るい未来に夢を馳せる場となることを願っています。
 最後になりましたが,本シンポジウムの創設から35年以上にわたる厚いご支援に対し,改めて公益財団法人MSD生命科学財団に心から御礼申し上げます。