罹患個体内では異常型プリオン蛋白に対する特異抗体はできません。異常型プリオン蛋白だけを認識する抗体については、数年前「Nature」に一報だけ報告があります。また、最近日本のある研究グループが異常型プリオン蛋白を特異的に認識するモノクローナル抗体を作ったと報告されていますが、実用化に至っておらず、実際に異常型プリオン蛋白だけを特異的に認識するかどうかは疑わしいところがあります。ですから、異常型プリオン蛋白に対する抗体は極めて出来にくいと言えます。しかし、感染・発症の抑制に免疫系は関与しており、特にトールライクレセプター(Toll like receptor)を介してCpGディオキシオリゴヌクレオチドで自然免疫を賦活化すると、感染因子の末梢から脳への移行が遅れるという最新のデータがあります。このことは、おそらく免疫系の修飾により発症を遅らせることが可能であることを示唆しています。
それは、難しい質問です。NPC1の場合も、プルキンエ細胞ではなく、周りのグリア細胞に多く発現しているとしているグループがあります。そうすると、IL6のデータや炎症が絡むのではないかというデータ、そういう結果を考えると、そういう環境下に置かれたときに一番弱い細胞が死ぬというのが仮説であり得ると思います。コレステロール代謝がプルキンエ細胞自身を異常にし、死なせるのではないのであれば、そういう状況ではなぜプルキンエ細胞が弱いんだという問題はまた出てきますが。もう一つは、この病気では、例えばプルキンエ細胞はなくなってしまうので、9週齢でもやっぱりプルキンエ細胞がないと生きていけない。放っておくと、やはりニューロンが皆死んでしまうという感があります。顆粒細胞層も、少し薄くなっていきます。そうすると、all or noneではなく、いつまで耐えられるかの差で決まるだけだとすると、そういう差を説明するのは難しいなと感じています。