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講演ツアー紀行文

“MBLA 2008”受賞者
英語よりグローバルな「化学語」を実感

東京工業大学大学院理工学研究科 准教授 大森 建

この度、2008年度のメルク−万有レクチャーシップアワードを受賞させていただくという誉れにあずかり、これまで足を踏み入れたことすらなかった、米国へ講演旅行に行けるという幸運に恵まれました。本賞の選考に関わられた万有生命科学振興国際交流財団の方々ならびに選考委員の諸先生に深くお礼申し上げます。このツアーを通じ、自分のこれまでの研究成果をとりまとめ、それを見つめ直すことができたことは、今後の研究の方向性を考える上で大変良い機会となりました。

心配事はただ一つ、自分の研究成果をはたして英語できちんと伝えることができるかということでした。自分なりに最近の結果をまとめ、なるべく簡潔に表現できるように努めました。

旅程は、スタンフォード大(Trost先生)→スクリプス研究所(Nicolaou先生)→シカゴ大(山本尚先生)→プリンストン大(McMillan先生)→メルク(Rahway)→ハーバード大(岸義人先生)→カリフォルニア大学バークレー校(Toste先生)の順でした。どの訪問先でも歓迎していただき、多くの一流研究者と交流することができました。訪問先での講演や、学生・教授とのディスカッションを通じて強く感じたことは「化学語」の威力でした。私の伝える英語が不十分でも、世界共通の化学式・構造(化学語)を使えば、化学についてじっくりと、満足のゆくまで議論を深めることがいとも簡単にできることを実感しました。もちろん、その力に甘えず、ツアー中も受けた質問やコメントなどを参考に、以降のプレゼン内容をどんどん進化(深化?)させていきました。普段なかなか取り組めない英語のブラッシュアップという作業の1年分くらいを、この2,3週間で集中的にやり遂げた気がします。

今回の世界の一流研究者との交流は、自分の思考に広がりを持たせるのに大いに役立ち、また、論文を通じてしか知らなかった様々な研究が、実際にどのような人々・環境で行われているのか、イメージを持つことができたという点で自分にとっては非常にプラスになりました。その反面、自身の研究は、それぞれ与えられた環境、立場でしっかり地に足をつけて、じっくりやればよいという確信も持つことができました。

少し時間をおいて、今回訪問した場所を再び訪れた時に、今度はどのように感じることができるか、いまから楽しみです。

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