新谷 亮
京都大学大学院理学研究科 助教
(現所属:東京大学大学院工学系研究科 准教授)
遷移金属触媒による環状有機化合物の高選択的合成法の開発
環構造を有する有機化合物は様々な分野で利用される有機物に広く見られ、その役割は非常に大きい。従って、多様な環状有機化合物を自在に合成し供給する方法の開発はきわめて重要である。新谷氏は、様々な環状有機化合物を触媒的に効率よく合成する新しい方法の開発を目的とする研究をおこなった。とくに「分子内に求核部位をもつ2価のπ-アリルパラジウム種」の触媒的発生とその利用を鍵とした新規触媒反応の開発に成功し、既存の方法ではアクセスが困難な様々な環状化合物の高選択的な合成法を確立した。
松永 茂樹
東京大学大学院薬学系研究科 講師
(現所属:東京大学大学院薬学系研究科 准教授)
多点配位性キラルリガンドに基づく多核協奏機能不斉触媒の開発
松永氏は、独自の多核性不斉配位子を基盤とする様々な多核金属触媒系の開発に成功した。多核金属錯体中の適切に空間配置された各々の金属中心が協奏的に機能することで、数多くの触媒的不斉炭素─炭素及び炭素─窒素結合形成反応において高い立体選択性が実現された。含窒素化合物を中心とする種々の光学活性合成素子を高い原子効率にて合成する手法を確立すると同時に、医薬化合物の触媒的不斉合成への応用も行った。
中尾 佳亮
京都大学大学院工学研究科 助教
(現所属:京都大学大学院工学研究科 講師)
協働金属触媒による炭素―炭素結合形成付加反応
分子を事前に官能基化することなく、新しい炭素―炭素結合の構築を可能にする有機合成反応の創出は、現代有機合成の最も重要な研究課題の一つである。中尾氏は、安定な炭素―水素結合および炭素―炭素結合を遷移金属とルイス酸の協働触媒作用によって活性化して、不飽和化合物を挿入させることによって新しい炭素―炭素結合を直接構築できる新反応を多数開発した。
大森 建
東京工業大学大学院理工学研究科 准教授
多環構造をモチーフとする生理活性天然物の全合成研究
近年、比較的低分子量の二次代謝産物が、核酸やタンパク質等の巨大分子の構造や機能調節に重要な役割を果たしていることが明らかになり、注目されている。しかし標的となる化合物は複雑で不安定な構造を有するものが多いため、それらの試料供給が困難であり、関連諸分野の進展を著しく妨げている。大森氏は、既存の方法の組み合わせでは非効率あるいは到達困難な化合物を合成標的として積極的にとりあげ、それぞれの実践の場で直面する問題を、独自のアイデアに基づいた斬新な合成戦略を立案、実践することによって解決し、実際にマクロリド、多環芳香族化合物、フラボノイド等、多岐にわたる天然有機化合物の全合成に関し卓抜な成果を挙げた。
伊丹 健一郎
名古屋大学 物質科学国際研究センター 准教授
(現所属:名古屋大学大学院理学研究科 教授)
オレフィンや芳香族化合物の触媒的直接化学変換に基づく機能性物質合成
有機化合物の機能発現における最も重要な基本構造のひとつである不飽和有機化合物の革新的分子変換法の確立は、合成化学者に課せられた重要な課題である。伊丹博士は、オレフィン、芳香族化合物、ナノカーボンなどの不飽和有機化合物の直接的化学変換(主に炭素_水素結合変換)を可能にする新触媒、新反応剤、新反応を開発するとともに、数々の光・電子機能性物質や薬理活性物質の創製に成功した。
寺尾 潤
大阪大学大学院工学研究科 助手
(現所属:京都大学大学院工学研究科 准教授)
アニオン性遷移金属錯体を触媒活性種とする炭素-炭素及び炭素-ケイ素結合形成反応の新方法論
アニオン性錯体の特性を活用した新しい反応原理に基づく触媒系の創出を目的とし研究を行った。その結果、(i)アニオン性錯体の中心金属の高い求核性を利用するクロスカップリング反応の開発、(ii)アニオン性錯体に配位したオレフィン類の求核的活性化を鍵とする位置選択的アルキル化及びシリル化反応の開発、(iii)アニオン性錯体を1電子移動剤として利用するラジカル反応の開発に成功した。
金井 求
東京大学大学院薬学系研究科 准教授
(現所属:東京大学大学院薬学系研究科 教授)
触媒的不斉炭素-炭素結合形成反応の創製と応用:四置換炭素のキラリティー制御
不斉触媒の設計において、Lewis酸-Lewis塩基多点認識概念およびソウトメタル-ハードアニオン共役触媒概念を確立し、従来は困難であった不斉四置換炭素の触媒的構築に成功した。また、開発した不斉触媒を活用し、多くの医薬化合物の合成も達成した。